National Association for Pelvic Health — Japan
がまんが、
あたりまえじゃない。
尿もれも、産後の違和感も、「年齢のせい」とあきらめなくていい。 NAPH(全国骨盤底協会)は、骨盤底の健康について信頼できる情報と、相談できる専門家を、誰もが見つけられる場所をつくります。
全国53施設から探せます。症状チェックは2分・登録不要で、医師にそのまま渡せる「受診メモ」ができます(診断ではありません)。
- 全国53施設のネットワーク
- 米国NAFCと連携
- 産婦人科専門医の監修
どこから読めばいいか、わからない方へ
Start here骨盤底の悩みは、人に話しにくいまま何年も続くことがあります。気になっていることを選ぶと、関連する情報の入口をご案内します。
症状の判定・診断を行うものではありません。気になる症状があるときは医療機関にご相談ください。
いま、気になっていることは?
相談できる専門家を、いま探そう
Find a specialist骨盤底の診療・ケアに携わる53施設(19都道府県)が参加しています。産婦人科・泌尿器科・内科・整形外科まで、地域で診てきた先生たちが名前を出して参加しています。「どこに行けばいいのか分からない」が、この悩みの一番の壁です。
- 施設名・所在地・診療科から絞り込めます
- 受診の可否や適応は施設ごとに異なります
- 迷ったら、先に症状チェックで受診メモを作ってからでも構いません
掲載順・検索順は会費や協賛によって変わりません。受診の可否・適応は各施設にご確認ください。
Participating facilities & doctors
参加している施設と、先生たち
カードをクリック(タップ)すると、その施設の詳細をご覧いただけます。
読みもの
Reading尿もれは何科に相談する?婦人科・泌尿器科・ウロギネ科の違い
尿もれのタイプと相談先の考え方 尿もれは年齢や出産歴にかかわらず起こり、恥ずかしさから相談が遅れやすい症状です。国際禁制学会(ICS)の定義では、咳・くしゃみ・運動などお腹に力がかかったときに漏れるものを「腹圧性尿失禁」、急に強い尿意が起こって我慢できずに漏れるものを「切迫性尿失禁」、その両方があるものを「混合性尿失禁」としています。走る、重い荷物や赤ちゃんを抱っこして立ち上がるといった場面は、腹圧性の典型です。夜の授乳で眠い中トイレが近い、ジョギングや縄跳びで下着が濡れる、水道の音や鍵を差す瞬間に我慢できないなど、具体的な場面が手がかりになります。 どの科に行けばよいか迷うときは、主な困りごとを軸に考える方法があります。出産後の会陰の違和感や腟の下がる感じを伴う場合は婦人科やウロギネ科が相談先になります。頻尿や強い尿意、夜間に何度も起きるなど「膀胱のコントロール」に関する悩みは泌尿器科が得意とされています。とはいえ、どの科でもまず話を聞き、必要に応じて連携や紹介が行われることが多いので、受診しやすい窓口を選ぶのも現実的です。 受診前に、自分の尿もれが起こる場面と回数、飲み物の種類や量、トイレに行く間隔、夜間の起床回数、使っているパッドの枚数などをメモしておくと評価が進みやすくなります。くしゃみの連発でじわっと滲むのか、急な尿意で一気に漏れるのか、授乳や更衣で寒さを感じたときに出やすいのか、といった違いも大切な情報です。 婦人科で相談しやすいケース 産後の数週間から数か月、抱っこや咳で「少し出てしまう」感じが続く、会陰切開や裂傷のあとが気になる、腟の中に何かが下がるような違和感がある、といった場面では婦人科が相談しやすい窓口です。更年期以降の腟の乾燥感やしみる感じ、性交痛に尿もれや頻尿が重なる場合も、ホルモン変化と骨盤底の関係を含めて評価されることがあります。夜間の授乳中にトイレが近い、走るときに下がるようで不安、といった日常の困りごとも遠慮なく伝えて大丈夫です。 婦人科では、問診に続いて内診(腟の診察)で腟壁や子宮の位置、会陰部の傷の治り方、骨盤底筋の緊張や協調性を確認することがあります。腟鏡を用いて腟の状態を観察し、咳をしてもらって尿道口付近の変化を見る簡単なテストが行われることもあります。必要に応じて骨盤臓器脱の段階評価、腟分泌の検査、超音波で子宮・卵巣の確認が加わります。保存的な対応として、骨盤底筋トレーニングや日常生活での工夫が勧められることが多く、適応に応じて腟内支持具(ペッサリー)の相談や、閉経後症状に対する治療の検討が行われることもあります。 腟から何かが触れる、長時間立っていると股に違和感が出る、タンポンが外れやすい、排便・排尿の姿勢を工夫しないと出にくいなどのサインがあるときも、婦人科で評価が進められます。必要に応じて泌尿器科と連携し、膀胱や尿道の機能面の検査を追加していく流れがとられることがあります。 泌尿器科で相談しやすいケース トイレが近い、急に強い尿意が来て間に合わない、夜間に何度も起きて睡眠が途切れる、といった「膀胱の症状」が主であれば泌尿器科に相談しやすいです。鍵を回す瞬間や水音で漏れる、帰宅のエレベーターを待つ間に焦る、長距離移動でトイレが心配、といった切迫感のエピソードは重要な手掛かりです。排尿時のしみる感じ、残尿感、熱っぽさなどがある場合は感染の評価が行われます。男性では前立腺の手術後に起こる尿もれや、前立腺肥大に関連する排尿トラブルの相談も泌尿器科の領域です。 泌尿器科では、尿検査で血尿や感染の有無を確認し、膀胱の残尿量を超音波で測る、尿の勢いをみる尿流測定、症状の質問票で日常生活への影響を把握する、といった基本的な評価が行われることがあります。生活調整(飲水・カフェイン・アルコールの見直し、骨盤底筋トレーニング、膀胱訓練)がまず提案され、必要に応じて薬物療法の選択肢が説明されます。状況によっては注入療法や手術が検討されることもあります。肉眼的な血尿や発熱、背中の痛みを伴う場合は、結石や感染など緊急性のある状態の可能性を考えて、速やかな評価が勧められることがあります。 咳やジャンプで漏れる腹圧性の症状が中心でも、泌尿器科で骨盤底リハビリの指導や保存療法が進められることは少なくありません。婦人科・ウロギネ科と連携して、症状のタイプに合わせて方針をすり合わせる体制がとられている地域もあります。 ウロギネ科(女性泌尿器科)とは ウロギネ科は、婦人科と泌尿器科の境界にある「女性の骨盤底の病気」を専門的に扱う分野です。医療機関によって名称は「女性泌尿器科」「骨盤底外来」「骨盤臓器脱・尿失禁外来」などと表示されることがあります。出産後から続く尿もれと腟の違和感、運動での漏れと強い尿意が混在するケース、性機能や便の出にくさも絡む複合的な悩みなど、骨盤底を総合的にみてほしいときに適しています。 ウロギネ外来では、問診と内診に加えて、骨盤底筋の働き(力の入れ方・脱力のしやすさ・呼吸との協調)を丁寧に確認し、日常の動作(抱っこ、咳、階段、スクワット)と結びつけたトレーニング計画を立てることがあります。保存療法(骨盤底筋トレーニング、生活調整、ペッサリー)を中心に、必要に応じて手術の説明が行われます。地域によっては専門外来が限られるため、まず身近な婦人科や泌尿器科に相談し、必要なら紹介を受ける流れでも問題ありません。 受診の流れと当日の検査 受診前の準備として、2〜3日分の簡単な排尿メモ(起床から就寝までの飲水量と時刻、トイレに行った時刻、漏れた場面と量、夜間に起きた回数)をつけておくと役立ちます。使っているパッドの種類や枚数、洗濯や消臭の工夫、運動や仕事の内容、内服中の薬(血圧・利尿薬・抗うつ薬など)やサプリ、妊娠・出産歴、更年期症状の有無も情報になります。可能であれば薬剤手帳を持参するとスムーズです。 当日は、症状の聞き取りのあと、身体診察が行われることがあります。女性では外陰部から腟の観察、必要に応じて内診で腟壁や骨盤底筋の状態、咳での変化を確認します。男性では外陰部の観察や、必要に応じて前立腺の評価が行われることがあります。診察や検査は同意を得て進み、プライバシーに配慮されます。不安や痛みが心配なときは、その場で伝えると配慮がなされます。 追加の検査として、尿検査、膀胱の残尿量をみる超音波、尿の勢いを測る尿流測定、咳をして漏れが出るかの簡便なテスト(ストレステスト)、症状質問票の記入などが行われることがあります。感染が疑われれば尿培養、血尿が続く場合はより詳しい検査が検討されます。多くは、骨盤底筋トレーニングや生活調整から始め、様子をみながら段階的に選択肢を検討していく進め方がとられます。 受診を考える目安 くしゃみ・咳・抱っこ・走るなどでの漏れが気になり、仕事や家事・運動を控えてしまうことがある 強い尿意でトイレに間に合わないことがあり、外出や通勤、育児に支障を感じる 夜中に何度も起きて眠れず、日中の眠気や転倒が心配になる 腟から何か下がる感じや股のこすれ・違和感があり、立ち仕事や長時間歩行でつらい 出産後や前立腺手術後の漏れが続き、不安やストレスが強い 血尿・発熱・背中の痛み・しびれなどを伴うときは、早めの受診や救急受診を検討する
産後の尿もれはいつまで続く?受診を考える目安
産後の尿もれに起こりやすい場面 出産後しばらくの間、咳やくしゃみ、笑った拍子に下着が少し湿る、赤ちゃんを抱き上げた瞬間にじわっと漏れる、といった場面が続くことがあります。床からベビーカーを持ち上げる、階段を上り下りする、洗濯物を抱えて動くなど、日々の動作に合わせてお腹に力が入りやすく、骨盤底に負担がかかりやすいからです。夜間の授乳で起き上がったときや、朝いそいでトイレへ向かう途中に間に合わない感じが強くなるなど、生活のリズムの変化も影響することがあります。 走る、早歩きする、トランポリンなどの跳ねる動き、産後のエクササイズ再開時にも、腹圧が一気に高まりやすく、尿もれが起きやすいとされています。とくに体がまだ回復途上の時期には、ちょっとした動きのクセで骨盤底の力の入り方が不均一になり、もれやすさを感じることがあります。オムツ替えで前かがみになる姿勢や、長時間の授乳姿勢でお腹や背中がこわばると、息を止めて力を込めやすくなる点も関係します。 鍵を差し込む直前や水の音で急に強い尿意を感じる、トイレの直前で焦って間に合わない、といった「切迫感」が前より気になりやすい方もいます。授乳による水分摂取のタイミング、睡眠不足、昼間のこま切れの休憩などが重なり、膀胱のリズムが乱れやすいことが背景にあるとされています。こうした場面は多くの方に共通し、恥ずかしいことではありません。 いつまで続くの?からだの回復の目安 妊娠・出産では、骨盤底の筋肉や靱帯が大きく伸び、骨盤内の神経も一時的に影響を受けることがあります。出産後は、子宮が元の大きさに戻っていく過程や、会陰部の傷の治りに合わせて、体の回復が少しずつ進むとされています。多くの方で、日常的な動作でもれやすい感じは、時間の経過とともに軽くなっていく傾向があると説明されますが、個人差が大きいのが特徴です。 授乳期は女性ホルモンの影響で、膀胱や尿道の粘膜が乾燥ぎみになり、刺激に敏感になることがあります。これにより、トイレが近い感じや、急に我慢しにくい感じが目立つことがあります。睡眠不足や育児ストレス、便秘、体のこわばりも重なると、症状が長引きやすいことが知られています。帝王切開でも妊娠中の影響は受けるため、産後にもれが気になることはあります。 会陰切開や裂傷、吸引・鉗子分娩、体格や赤ちゃんの大きさなど、出産の経過によって回復の道すじはさまざまです。目安として、産褥の経過観察が一段落する頃に日常動作でのもれがどう変わっているかを振り返ると、自分の回復ペースがつかみやすくなります。完全に消えるかどうかではなく、「頻度が減っているか」「量が少なくなっているか」「困りごとが増えていないか」といった視点で見ると、次の対策を考えやすくなります。 自分でできる対策と続け方 まずは骨盤底を意識して動かす練習が勧められることがあります。椅子や床に座り、背すじをやさしく伸ばし、息を止めずに、肛門や尿道のまわりをすっと引き上げるように締め、ふわっと緩める動きを繰り返します。お腹やお尻、太ももに力が入りすぎていないかを時々確認し、力みと息こらえを避けるのがコツです。最初は短時間から、家事や授乳の合間に少しずつ取り入れると、続けやすい方が多いです。 くしゃみや抱っこなど、もれやすい場面の直前に、骨盤底を先に軽く締めてから動く「予備収縮」を試す方法もあります。たとえば「くしゃみが出そう」と感じた瞬間にきゅっと引き上げてから咳をする、赤ちゃんを持ち上げる直前に骨盤底にスイッチを入れる、といったタイミングの工夫です。階段や早歩きでは、一段目を踏み出す前に一呼吸おき、骨盤底を意識してから動き出すと楽に感じることがあります。 水分は極端に減らしすぎない範囲で、こまめにとるのが勧められることがあります。カフェインや刺激の強い飲み物でトイレが近くなる方は、量やタイミングを見直すと楽になることがあります。便秘があると腹圧がかかりやすくなるため、食物繊維や水分のとり方、トイレの姿勢(足を少し高くして前傾になる)などの工夫が助けになることがあります。排尿の途中で尿を止める練習は、排尿のリズムを乱す可能性があるため、日常のトレーニングとしては勧められないことがあります。 日常で避けたい動作と工夫 産後まもない時期は、重い荷物を勢いよく持ち上げる、息を止めて踏ん張る、長時間同じ姿勢で前かがみになる、といった動きで腹圧が高まりやすくなります。赤ちゃんを抱き上げるときは、足を肩幅に開き、息を吐きながら体の近くでゆっくり持ち上げると、骨盤底への負担がやわらぐことがあります。キャリーや買い物袋を片側だけで持たず、できるだけ左右に分けて、こまめに休憩を挟むのも助けになります。 夜間の授乳やおむつ替えでは、眠気のなかで急に立ち上がると、強い尿意やふらつきが重なってあわてやすくなります。ベッドの近くに明かりを用意し、いったん座ってからゆっくり立ち上がる、トイレまでの動線を片づけておくと安心です。外出時は、トイレの場所を先に確認する、階段よりエレベーターを選ぶ、スポーツ再開は体調の良い日から短時間で試すなど、無理のない計画が役立ちます。 使い捨ての吸水シートやショーツなどのケア用品を、肌に合う範囲で活用するのも一つの手です。においや肌トラブルが気になる場合は、こまめに交換する、通気性のよい下着を選ぶ、帰宅後にシャワーで流すなど、基本的なスキンケアが助けになります。ケア用品は症状を隠すためだけでなく、安心材料として外出のハードルを下げ、生活リズムを整えやすくする目的でも使われます。 受診したら何をする?診察の流れ 産科・婦人科、泌尿器科、骨盤底(ウロギネ)領域では、まず問診で、いつから、どの場面で、どのくらいの量か、夜間や日中の回数、痛みや発熱の有無、出産の経過、授乳状況、便秘や咳の有無などを確認します。自分の言葉で「くしゃみでティッシュ一枚分」「抱っこのたびに少量」「夜の授乳後に間に合わないことがある」など、具体的に伝えると、状況が伝わりやすくなります。数日間の排尿日誌を持参すると、診察がスムーズになることがあります。 診察では、尿検査で感染や血尿の有無を確認し、必要に応じて残尿量の評価、骨盤底の筋力や協調性の確認、腟からの診察で骨盤臓器の下がり具合や会陰の傷の回復状況をみることがあります。咳やいきみで尿道から漏れが生じるかを確かめる簡単なテストが行われることもあります。これらはいずれも、授乳中でも受けられる検査とされています。 方針としては、生活上の工夫や骨盤底トレーニングの指導、便秘や咳のコントロール、膀胱のリズムを整える助言などが基本になります。必要に応じて、理学療法の専門的な運動指導が勧められることがあります。症状や所見によっては、器具による支持や、時間をおいて経過をみる選択が提案されることもあります。自分のペースや生活との両立を相談しながら、負担の少ない方法から段階的に進めるのが一般的です。 受診を考える目安 産後しばらく経っても、日常動作での尿もれが続き、育児や外出に支障を感じるとき くしゃみ・咳・抱っこ・階段などでほぼ毎回漏れる、量や回数が増えていると感じるとき 強い尿意で間に合わない、トイレが極端に近い、夜間に何度も起きて疲れが強いとき 排尿時の痛みや発熱、下腹部の痛み、血尿があるなど、感染が疑われるサインがあるとき 腟の中に下がる感じやピンポン玉のようなふくらみ、腰や骨盤の重だるさが気になるとき ほとんど尿が出ない、出し切れない感じが続く、しびれや便もれなど他の症状を伴うとき
骨盤底筋トレーニングの正しいやり方と続けるコツ
骨盤底筋を「正しく」使う感覚をつかむ 骨盤底は、骨盤の底で内臓を支え、尿や便を我慢する働きを持つ筋の集まりです。骨盤の奥でハンモックのように広がり、尿道・腟・肛門のまわりを取り囲んでいます。トレーニングの第一歩は、どの筋をどの方向に動かすかの感覚づくりです。お腹やお尻をぎゅっと固めるのではなく、肛門と尿道のまわりを「内側にそっと引き寄せ、上に引き上げる」イメージが役立つとされています。息を止めずに、自然な呼吸のまま行うことが基本です。 はじめは横になったり、横向きや楽な椅子に浅く腰かけた姿勢で、体の力を抜いて試します。「おならをこらえる」「尿道まわりを静かに閉じる」と意識すると、下腹やももの付け根ではなく、会陰(肛門と腟の間)あたりが内側に近づく感覚が得られる方が多いです。鏡で会陰部の動きを視覚的に確認したり、衣服の上から骨盤底に近い部分に手を当てて、余計な筋肉(お尻、太もも、腹筋)が固くなっていないかを確かめるのも一法です。 「ちゃんと締められているか不安」というとき、排尿の途中で少しだけ止められるか試す方法が紹介されることがあります。ただし、これは筋を見つける一度きりの確認にとどめることが勧められることがあります。International Continence Society(ICS)の患者向け資料でも、実際の排尿を止めることを反復練習としては用いないよう注意喚起されています。繰り返し行うと排尿機能に負担となるため、普段の練習はトイレ以外の場で行うのが安心です。 基本のトレーニング手順(ゆっくり・すばやく) 基本は「ゆっくり締めて保つ」「すばやくキュッと締める」の2種類を組み合わせる方法が用いられています。まずは息を吐きながら、肛門・尿道・腟のまわりを内側へそっと集め、エレベーターを1段上に上げるように引き上げます。数秒たったら力を抜き、完全にゆるむまで待ちます。これを繰り返すのがゆっくりの収縮です。続いて、くしゃみの直前のように瞬間的に「キュッ」と短く締めてすぐにゆるめる、すばやい収縮も加えます。どちらも肩やあご、腹筋に不要な力みが出ないように、口からふっと息を吐くとコントロールしやすくなります。 姿勢は、最初は仰向けや横向きなど重力の影響が少ない体位から、慣れてきたら座位、立位、そして歩行中や家事の最中などへと段階的に難易度を上げていくとされています。日によって調子が違うのは自然なことです。会陰部が重たい、腟の中に下がる感じが強いなどのサインがある日は、無理をせず回数を減らしたり、横になった姿勢に戻すと安心です。反対に、違和感がない日は少し負荷を上げて立位で行うなど、体の反応をみながら調整します。 具体的な回数や期間の目安については、英国の診療ガイドライン(NICE NG123、2019年)は、女性の腹圧性尿失禁・混合性尿失禁に対して、専門職の指導のもとで少なくとも3か月間の骨盤底筋トレーニングを最初の治療として勧めています。また、1日に少なくとも8回の収縮を1日3回行う目安が紹介されています(NICE)。ただし、個人の症状や筋力に応じて安全な回数や持続時間は異なります。痛みや張りを伴わず、翌日にだるさが残りにくい範囲を保ちながら、徐々に増やしていくのが基本です。ICSの資料でも、ゆっくりの収縮とすばやい収縮を組み合わせる方法が紹介されています。 ありがちなまちがいと体へのサイン 骨盤底筋トレーニングでは「強くやるほどよい」とは限らないとされています。ありがちなまちがいは、息を止めてお腹に力をこめる、肛門を押し出すようにいきむ、内もも・お尻・背中を過剰に固める、肩がすくむといったパターンです。これらは骨盤底の「引き上げ」ではなく「押し下げ」になりやすく、咳やくしゃみ時の尿もれ対策としては逆効果になることがあります。鏡や触覚で確認しながら、力の方向が「内側と上向き」になっているかを意識するのがポイントです。 体からのサインにも注意します。練習の最中や後に、下腹部や会陰に痛み・刺すような不快感がある、排尿・排便がしづらくなる、腟の中に下がる感じが強くなるようなら、負荷が強すぎたり、筋が過度に緊張している可能性があります。こうした場合はいったん回数や力の入れ方を減らし、呼吸に合わせて「ゆるめる時間」を長めにとると楽になることがあります。温めたり、深呼吸で骨盤底がゆるむ感覚(吸気で底が下がり、呼気で軽く上がるリズム)を確認するのも助けになります。 また、痛みをがまんしながらの反復は勧められません。性交痛や慢性的な骨盤周囲の痛みがある方、便が硬くいきむことが多い方は、骨盤底をゆるめる練習や姿勢の調整から始めるほうが合う場合があります。トレーニングの狙いは「常に締める」ことではなく、「必要なときに必要なだけ締め、使わないときはゆるめられる状態」に近づけることとされています。 生活の中での使い方:くしゃみ・抱っこ・夜間授乳・運動 日常の「その瞬間」に骨盤底を使えると、練習の効果を実感しやすくなります。代表的なのが、いわゆる“合図に合わせた事前収縮”です。咳・くしゃみ・笑いの直前、軽く息を吐きながら会陰をキュッと引き上げ、終わったら力を抜きます。外出先で突然のくしゃみが来そうなとき、マスクの内側でそっと息を吐きながら行うと周囲に気づかれにくいです。自宅ではティッシュを取る動作を「合図」にして、毎回セットで軽く締める練習をすると習慣化しやすいです。 赤ちゃんの抱っこや重い買い物袋を持ち上げるときは、持ち上げる直前に「骨盤底を小さく準備→お腹は息を吐いてふっとサポート→持ち上げる→ゆるめる」という順番を意識します。特に産後の時期は、床からの抱き上げやベビーカーの折りたたみなど前屈みになる場面で、背中と骨盤底に同時に負担がかかりやすいです。夜間授乳で何度も起き上がるときは、いきなり腹筋で起き上がらず、横向きになってから腕で支えて起きる「ログロール」の動きにすると、腹圧の急上昇を抑えやすいとされています。起き上がる直前に会陰を軽く引き上げる一呼吸を挟むと安定します。 運動時は、ジャンプ・ラン・踏ん張る動きの前に小さく締める工夫が役立つとされています。縄跳びやジョギングの前に、立位でゆっくりと数回の収縮→すばやい収縮を行い、「使える準備」をしておくのも一案です。スクワットでは、しゃがみながら息を吸い、立ち上がりながら息を吐いて骨盤底を引き上げると、腹圧とのバランスが取りやすくなります。水分やカフェインの摂り方、トイレに行くタイミングなど生活全体の工夫も、トレーニングと併せて見直すと効果を感じやすいとされています。 つづけるコツとセルフチェック 毎日続けるには、一度に長くやるより、短い時間を毎日積み重ねるほうが現実的です。歯みがきの前後、授乳の前、通勤電車の1駅分など、既にある習慣に重ねると忘れにくくなります。スマホのリマインダーや家事の導線に付せんを貼ると、忙しい日も「1セットだけ」はできる方が多いです。予定どおりにできなかった日は、寝る前に仰向けで深呼吸とやさしい収縮を数回でも十分です。週の振り返りをして、無理のない回数・時間帯に調整していきましょう。 セルフチェックとしては、「お腹や太ももが固くなっていないか」「呼吸が止まっていないか」「収縮の後に完全にゆるめられているか」を定期的に確認します。慣れてきたら、立位や歩行中に短い収縮ができるか、くしゃみの直前に反射的に軽く締められるかも目安になります。便秘がちの方は食物繊維や水分の摂り方、排便時にいきみを減らす座り方(足を少し高くするなど)も同時に見直すと、骨盤底への負担が和らぎやすいです。 専門職のサポートを受けると、正しくできているかの客観的な確認ができます。受診では、まず症状や生活の状況、出産歴・手術歴・内服薬などの問診が行われます。必要に応じて内診または直腸診で骨盤底の収縮の方向や強さ、ゆるめ方を触診で確認し(オックスフォードスケールなどの評価が用いられることがあります)、あなたに合ったコツが具体的に示されます。超音波での観察やバイオフィードバック、電気刺激などの物理療法が提案されることもあります。効果を判断するには、少なくとも3か月は続けることが目安とされています(NICE NG123)。排尿日誌の記録や、日常動作に合わせた練習計画まで一緒に立てられるため、つづけやすくなる方が多いとされています。 受診を考える目安 3か月ほど丁寧に続けても、くしゃみ・運動・抱っこなどでの尿もれが日常生活に支障をきたすと感じるとき 正しく締められている感覚がつかめない、力を入れると下がる・押し出す感じがあり不安なとき 練習中または後に会陰・下腹部の痛みや、腟の中に下がる違和感が強まる、出血・発熱などの症状があるとき 夜間の授乳や仕事に差し支えるほどの頻回な尿意・尿もれがあり、生活の工夫だけでは対応が難しいとき 便秘・便もれ・ガスもれなど排便のトラブルを同時に抱えており、トイレ習慣や食事の調整だけでは改善しにくいとき 妊娠中・産後・手術後など体の変化が大きい時期で、自己流で進めるのが不安、専門職のチェックを受けたいとき
夜中に何度もトイレに起きる:夜間頻尿で考えられること
夜間頻尿とは?考えられる仕組み 夜間頻尿は、夜間睡眠中に排尿のために1回以上起きる状態を指すとされています(International Continence Society: ICS の定義)。「たまに起きる」だけでなく、そのために眠りが妨げられ、日中の眠気や集中力低下、転倒の不安につながると負担が大きくなります。年齢や性別にかかわらず起こりうる症状で、原因はひとつではないことが多いです。 背景には大きく分けて、夜に尿が多くつくられる「夜間多尿」、膀胱にためられる量が少ない「膀胱容量の低下(過活動膀胱や炎症など)」、眠り自体が浅く何度も目が覚める「睡眠障害」、それらが組み合わさった状態が考えられます。日中に足がむくみ、横になると余分な水分が血流に戻って夜に尿として出やすくなることもあります。カフェインやアルコールの摂取、冷え、ストレス、就寝直前の大量の水分や汁物も影響します。 病気がかかわる場合もあります。膀胱炎などの尿路感染、前立腺肥大症、過活動膀胱、糖尿病で血糖が高いとき、心不全や腎機能の低下、睡眠時無呼吸症候群などです。服用中の薬剤(利尿薬や一部の降圧薬、寝る前の水分と一緒に飲む薬など)が影響することもあります。どれが中心かによって対策が変わるため、思いあたる生活の要因と持病・薬の情報を整理しておくと受診の助けになります。 日常のどんな場面で気づく? 夜中に2回、3回と目が覚め、朝方に強い眠気が残る、夕方以降にトイレが近くなる、といった日常の変化がきっかけになります。例えば、就寝前にお茶や温かいスープを多めに飲んだ夜、冷える季節、布団に入ってからスマートフォンを長く見てしまった日などに回数が増えることがあります。夜の授乳や赤ちゃんの夜泣きで起きたついでに毎回尿意を感じる、という産後の方もいます。 日中はあまり行かないのに、夜だけ回数が多い場合、夕方以降に足がむくんで靴下の跡が深くつく、帰宅して横になるとしばらくして尿意が強くなる、といったサインが目印になります。また、いびきや呼吸の途切れを家族に指摘される、朝起きたときに口が渇いている、日中の強い眠気があるときは、睡眠時無呼吸が関与することがあります。運動後に水分を一気にとった夜、長距離の移動で夕食が遅くなった日など、特定の状況で悪化するパターンに気づく方もいます。 男性では、就寝直後は出にくく何度も行きたくなる、排尿後も残った感じがする、勢いが弱いなどの前立腺によるサインが目立つことがあります。女性では、日中の尿意切迫やくしゃみでのもれとあわせて夜間の回数が増えると、過活動膀胱や骨盤底の支えの弱さが背景にあることがあります。こうした「自分の夜のパターン」を客観的に知るために、起きた時刻と量を数日記録してみると、原因の見当がつきやすくなります。 自分でできる工夫 まず、夕方以降の水分・塩分のとり方を見直します。日中こまめに水分をとり、就寝2~3時間前以降は一気飲みを避けて少量にとどめる方法が勧められることがあります。夕食は塩分や汁物が多いと夜間の尿量が増えやすいため、スープや鍋の汁は控えめにします。アルコールやカフェイン(コーヒー、緑茶、エナジードリンクなど)は利尿や睡眠の質低下に関わるため、就寝前は避けるとよいとされています。極端な水分制限は脱水や便秘、血圧低下につながることがあるため、無理はしないことが大切です。 むくみ対策も役立ちます。日中に足を少し高くして休む時間をとる、ふくらはぎのポンプ運動(つま先立ちや足首回し)をこまめに行う、帰宅後すぐ横になるのではなく、就寝の2~3時間前にいったん脚を上げて水分を循環させておく、といった工夫があります。弾性ストッキングなどの圧迫を使う場合は、体調や血流の状態で合う・合わないがあるため、医療者に相談して選ぶことが勧められることがあります。 眠りの整え方も効果が期待できます。就寝前の強い光や画面は控え、寝室を冷やし過ぎないようにし、布団に入る前に一度トイレに行く習慣をつけます。冷えで尿意が強まる場合は、寝間着や腹部・足元を温かくする、就寝1~2時間前の入浴で体を温めてから緩やかに体温を下げると眠りに入りやすくなります。便秘があると膀胱が刺激されやすいため、食物繊維や適度な運動での腸のリズムづくりも役立つことがあります。服用中の利尿薬の時間帯を夕方から日中に調整できるかは、自己判断せず処方医に相談してください。 受診したら何をするの? 受診では、まず詳しい問診が行われ、夜に何回起きるか、1回あたりの尿量、就寝前の飲食、日中の回数、むくみ、いびきや眠気の有無、既往歴や内服薬が確認されます。数日間の排尿日誌(飲んだ量と時間、排尿の量と時間、夜間の合計尿量など)を持参すると評価がしやすくなります。ICSでも、症状の整理に排尿日誌の活用が推奨されています。 検査として、尿検査で感染や血尿、糖の有無を確認し、超音波で排尿後の残尿や前立腺の評価が行われることがあります。必要に応じて血液検査で腎機能や電解質、血糖を確認し、むくみや息切れがあれば心臓の評価が勧められることがあります。睡眠時無呼吸が疑われる場合は、睡眠検査の専門医療機関への紹介が検討されます。これらは痛みを伴わない検査が中心で、外来で完結することも多いです。 治療やケアは原因に応じて組み合わせます。夜間多尿が主体なら、夕方以降の水分・塩分調整やむくみ対策に加え、抗利尿薬が選択されることがあります(低ナトリウム血症の予防のため、医師の管理下で行います)。過活動膀胱が関与していれば、行動療法に加えて抗コリン薬やβ3作動薬が用いられることがあります。前立腺肥大症が背景なら、尿の通りを助ける薬(α遮断薬など)が検討されます。睡眠時無呼吸が見つかれば、体重管理や睡眠時の呼吸を助ける治療が勧められることがあります。睡眠薬は転倒やふらつきのリスクがあるため、必要性や種類を医師と慎重に相談します。 診察室では、具体的な生活の時間割に沿って一緒に調整案を立てることが多いです。例えば、夕方の散歩の後はコップ1杯だけにする、就寝2時間前にいったん脚を上げる時間を入れる、カフェインは午後の早い時間までにする、就寝直前の飲み物は温かいものを少量、などです。授乳期や介護中で夜間に起きざるを得ない方でも、起きる回数を減らしたり、起きたときの安全性(足元の照明、スリッパの滑りにくさ)を高めたりする工夫を一緒に考えます。 受診を考える目安 夜間頻尿は生活の影響が大きい一方、思わぬ病気が隠れていることもあります。自己判断で我慢したり、極端な水分制限を続けたりする前に、次のような場合は医療機関で相談することが勧められます。 以下の目安はあくまで一例です。受診先は、泌尿器科、女性では婦人科や骨盤底の専門外来、持病が関係しそうならかかりつけ医からの相談でも構いません。受診前に2~3日分の排尿日誌をつけて持参すると、診察が進めやすくなります。 夜間に2回以上の排尿が続き、日中の眠気や仕事・家事・育児に支障が出ている トイレに急いでふらつく、転びそうになる、実際に転倒したことがある 排尿時の痛みや発熱、血尿がある、尿の色やにおいが急に変わった 足のむくみや息切れ、強いいびきや呼吸の途切れを家族に指摘される 糖尿病・腎臓や心臓の病気がある、または利尿薬などの薬を飲んでいて気になる変化がある 生活の工夫を2~3週間続けても改善の実感が乏しい、むしろ悪くなっている
数字で見るNAPH
全国骨盤底ネットワークの参加施設。産婦人科・泌尿器科ほか。
北海道から沖縄まで。相談できる場所を、住む場所で諦めない。
症状・原因・受診の目安を、専門医の監修のもとで解説。
米国NAFC(National Association For Continence)と連携して活動しています。
「がまん」を変えていくのに、特別な資格はいりません。あなたにできる関わり方があります。
活動を支えよう
寄付で活動を支えていただけます。使いみちは年次で公開します。
寄付について02専門家として参加しよう
診療・ケアに携わる方は、専門家検索への掲載登録ができます。
掲載登録へ03知らせよう
参加施設バッジを掲示する。記事を誰かに渡す。それも活動です。
バッジを受け取る掲載順・検索順は会費や協賛によって変わりません。
For professionals
医療従事者の方へ
専門家検索への掲載、会員制度、医療顧問委員会・拠点施設のご案内。
Medical notice
本ページは一般的な情報提供を目的としています。特定の効果を保証したり、診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。

