Conditions

産後の骨盤底

出産後は骨盤底に負担がかかることがあります。尿もれや違和感が続くこともありますが、体調やペースには個人差があります。

産後女性

監修:丸山 真理子(産婦人科専門医)

出産は、赤ちゃんの通り道となる骨盤底に大きな負担がかかる出来事です。産後は尿もれや会陰まわりの違和感、下腹部の不快感などを感じる方が少なくありません。

これらの変化がどのくらい続くか、どの程度感じるかには個人差が大きく、同じ産後の時期でも人によって状態はさまざまです。多くの場合、体はゆっくりと回復していきますが、そのペースを他人と比べる必要はありません。気になる症状が続く場合や、不安を感じる場合は、無理をせず産婦人科に相談してください。

← 横にスワイプすると全体が見られます

FIG. 08回復には、時間がかかっていい骨盤底の状態妊娠前の状態大きく引き伸ばされ、支える力が一時的に落ちる少しずつ戻る。ただし速さは人それぞれ出産産後1か月数か月1年〜尿もれ・違和感などの症状が続くときは、「産後だから仕方ない」と待たず、どの時期でも相談できます。産後1か月健診は、骨盤底のことを聞ける最初の機会です。
模式図。回復の経過は分娩の状況や体質によって大きく異なり、この曲線は目安ですらありません。気になる症状は医療機関へ。

受診の目安

産後しばらくたっても尿もれや違和感が続く場合は、産婦人科にご相談ください。回復には個人差があります。

早めに相談したいサイン

  • 多い出血が続く、かたまりが出る
  • 発熱がある、傷や下腹部に強い痛みがある
  • 尿が出せない、または出しにくい
  • 気分の落ち込みが強く、日常生活が続けられない

これらに当てはまる場合は、セルフケアで様子を見るのではなく、早めに医療機関にご相談ください。強い痛みや急な変化があるときは、受診できる医療機関を早めに探してください。

主な症状

  • 産後の尿もれ
  • 骨盤まわりの違和感
  • 重い物でもれる

考えられる背景・原因

  • 妊娠・分娩による骨盤底への負担
  • 組織の回復途上

なぜ起こるのか(からだのしくみ)

  • 妊娠中はおなかの中の赤ちゃんが大きくなるにつれて、骨盤底には長期間にわたり持続的な負担がかかります。
  • 経腟分娩では、赤ちゃんが産道を通る際に骨盤底の筋肉や神経が大きく伸ばされることがあるとされています。
  • 会陰や骨盤底の組織は、出産の直後から時間をかけてゆっくりと回復していくと考えられています。
  • 回復のスピードには、分娩の経過や体質、もともとの体力などさまざまな要因が関わり、個人差があります。
  • 授乳期はホルモンバランスの影響で、組織の状態が一時的に変化することがあるとされています。
  • 帝王切開の場合であっても、妊娠中に骨盤底へかかった負担そのものは経腟分娩と共通する部分があります。

セルフケアの考え方

  • 無理のない範囲での骨盤底のケア
  • 産後の体調に合わせた生活
  • 気になる症状は早めに相談

医療機関では何をするのか

  • 産後健診などの機会に、体の回復状況について確認や問診が、通常の流れのなかで行われます。
  • 尿もれや会陰まわりの違和感の有無、程度について、問診で丁寧に伺うことがあります。
  • 必要に応じて、会陰や骨盤底の状態を直接診る診察が、無理のない範囲で行われることがあります。
  • 気になる症状が続く場合には、時期を見て骨盤底の機能を確認する評価がすすめられることがあります。
  • 体の状態だけでなく、睡眠や気分の変化といった産後の心身全体が話題にのぼることもあります。

実際に行う内容は、症状や施設の体制によって異なります。すべてを一度に行うわけではありません。

対処の選択肢(考え方)

産後の骨盤底のケア

体調の回復に合わせて、無理のない範囲で骨盤底を意識したケアを少しずつ、日々の生活のなかに取り入れていくことがすすめられる場合があります。

開始の時期や方法は、産後の経過や体調によって異なります。

体調に合わせた活動量の調整

家事や育児の負担を一人で抱えすぎず、周囲の助けを借りながら休息をとり、少しずつ日常の活動量を戻していく考え方が紹介されることがあります。

専門家によるケア

産後の体を専門とする医療者や理学療法士など、専門家による評価やケアを受けることが、選択肢の一つとして案内されることがあります。

経過観察

多くの症状は時間の経過とともに落ち着いていくとされていますが、長く続く場合や不安が強い場合には、医療機関での確認がすすめられます。

どの方法が適しているかは、原因・程度・生活・ほかの病気の有無によって変わります。当協会は特定の方法や製品をすすめる立場にありません。判断は必ず医療機関で行ってください。

日常でできる工夫

  • 産後の体調には個人差が大きいため、他の人と回復のペースを比べすぎないようにします。
  • 育児の合間に、たとえ短い時間であっても、横になって体を休める時間を意識して作るようにします。
  • 上の子の抱っこなど重い物を持つ場面では、腰やおなかへの負担を意識して姿勢を工夫します。
  • 尿もれが気になる場面では、あらかじめケア用品を用意しておくと気持ちの面でも安心です。
  • 水分をとりすぎない、逆に我慢しすぎないなど、極端にならない排尿の習慣を心がけます。
  • 気分の落ち込みが強い日や、体調が優れない日が続く場合は、心の状態についても相談してよいと知っておきます。
  • パートナーや家族に育児や家事の負担を分担してもらうことも、回復を助ける工夫の一つです。

よくある誤解

産後の尿もれは仕方がないので相談しなくてよい

多くの方が経験する症状ではありますが、相談することで生活の工夫や新たな選択肢が見つかることがあります。我慢し続ける必要はありません。

産後○ヶ月までに治らないとずっと続く

回復のペースには個人差が大きく、時期にかかわらず改善に向かう場合もあれば、しばらく続く場合もあります。焦らず経過をみながら相談することがすすめられます。

帝王切開なら骨盤底のケアは不要

帝王切開の場合でも、妊娠による骨盤底への負担そのものは生じているため、経腟分娩と同様にケアの対象として考えられることがあります。

受診のときに伝えるとよいこと

  • 分娩の方法(経腟分娩・帝王切開・吸引や鉗子の使用など)
  • 出産からの経過期間
  • 尿もれや違和感が出る場面(咳・くしゃみ・運動時など)
  • 授乳の状況(授乳中かどうか)
  • 育児や睡眠の状況、心身の疲労感

よくある質問

産後の尿もれはいつ頃から相談してよいですか。

時期にかかわらず、気になった時点で相談して問題ありません。産後すぐでも、しばらく経ってからでも、専門家に状態を聞いてもらうこと自体が、回復への手がかりになります。

骨盤底のケアはいつから始められますか。

開始の時期は産後の経過や体調によって異なり、一律に決まっているわけではありません。自己判断で急に始めるのではなく、産後健診などの機会に医療者へ相談してから取り入れることがすすめられます。

次の妊娠を考えていますが、今のケアは意味がありますか。

産後の体を整えることは、その時々の生活の質に関わるとされています。次の妊娠の予定があるかどうかにかかわらず、気になる症状があればその都度、医療機関に相談することがすすめられます。

上の子の育児で体を休める時間がありません。回復に影響しますか。

休息の取りにくさは回復のペースに影響しうる一因ですが、状況は各家庭によって異なります。無理をしすぎていると感じたら、その状況ごと医療機関や家族に相談してみてください。

本ページの本文は編集部による下書きです。産婦人科・泌尿器科の専門医による監修を経て確定します。

Medical notice

本ページは一般的な情報提供を目的としています。特定の効果を保証したり、診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関にご相談ください。

監修:丸山 真理子(産婦人科専門医)